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市民なら絶対しないお金の出し方? 五島市5800万円和解の『おかしさ』

五島市に住む一市民として、そして今回の住民監査請求人の一人として、この内容に触れ続けています。
今、五島市は12月定例会に
「和解金(解決金)5800万円を市のお金(公金)から支出する議案」を提出しました。

5800万円で和解 税金支出へ
丸田たかあき
丸田たかあき

「いったい何が問題なのか」
「被害者への賠償に反対しているのか」

と誤解されかねないと感じ、あらためて説明したいと思います。

1 まず、何が起きたのか

  • 五島市の元職員(保健師)が、担当していた高齢男性の預貯金400万円を不正に引き出したとして、窃盗罪で有罪判決(2021年4月)。
  • その後、別の事件(時効)の被害者相続人が神戸地裁尼崎支部へ民事裁判を提起された。
    「市と元職員は連帯して約5071万円と遅延損害金を払え」
    という判決が出ました(2025年3月13日)。

つまり、

元職員の犯罪行為によって被害が生じ、
被害者側は「元職員だけでなく市にも責任がある(国家賠償法第1条に基づき)」と訴え、
裁判所も「五島市にも一定の責任がある」と判断した

という状況です。そしてなぜ私は住民監査請求をしたのか


2 五島市はいま何をしようとしているのか

  • 市はこの一審判決に対していったんは控訴し、「市の使用者責任はない」と主張していました。
  • ところが途中で方針転換し、「解決金 5800万円を市の公金から支出して和解する」方向を打ち出しました。
  • そのため、12月定例議会に和解議案と補正予算案を提出し、可決を求めようとしています。

ここまでは、新聞記事でも報じられているとおりです。

20251202 長崎新聞掲載【住民監査請求低提出】

3 私が問題にしているのは「ここ」です

私が住民監査請求で指摘したポイントは、大きく3つです。なぜ私は住民監査請求をしたのか

  1. 元職員の「故意の犯罪」による損害を、市のお金だけでほぼ全額肩代わりしようとしているのではないか
  2. 元職員に「5800万円の求償義務を課す」と言いながら、
    • 担保
    • 公正証書
      などの債権保全(本当に回収できるようにする仕組み)が何も決まっていない
      =「支払い方法は後日協議」と書いてあるだけ
  3. 一審では「市に責任はない」として控訴していたのに、
    市民への十分な説明もなく、急に5800万円支出へと大転換したこと

つまり、

被害者への賠償そのものに反対しているのではなく、
「その支払われ方」と「税金の守り方」があまりに甘いのではないか

という点を問題視しています。


4 「求償権」とは何か?市民生活での例え

ここで出てくるのが「求償権(きゅうしょうけん)」です。
漢字だけ見ると難しそうですが、中身はとても身近な話です。
※国家賠償法第1条第2項における求償権は、公務員の故意または重大な過失によって国・公共団体が損害賠償責任を負った際に、その公務員に対して支払いを求める権利です。これは、国・公共団体が被害者へ支払った賠償額の一部を、公務員本人に負担させるための制度です。 

例① 友だちの借金の「連帯保証人」になったとき

  • 友だちAさんが100万円を借りる
  • あなたが連帯保証人になる
  • Aさんが払えなくなると、金融機関はあなたに100万円を請求してくる
  • あなたが100万円を払ったあと
    → 「本来払うべきはAさんだから、私に返して」とAさんに請求できる

この「あとからAさんに請求できる権利」が求償権です。

例② アパートの保証会社

  • あなたがアパートを借りるとき、保証会社と契約する
  • あなたが家賃を滞納すると、
    保証会社が大家さんに立て替えて支払う
  • そのあと保証会社は、あなたに
    「あなたの代わりに払った家賃を返してください」と請求する

これも保証会社の求償権です。


5 普通の市民なら「担保なしで5800万円貸すか?」

ここで、五島市の今回の案を「普通の市民感覚」に置き換えてみます

  • 元職員は、故意の犯罪で大きな損害を生じさせた
  • 五島市は、被害者に対して5800万円をいったん市のお金から払う
  • その代わりに元職員に求償義務を負わせる、とは言うが
    • 担保も未定
    • 公正証書もなし
    • 返済計画もあいまい
    • 「支払い方法は後日協議」

これを、もし民間の金融機関がやったらどうでしょう。

とりあえず「5800万円貸します。
担保もいりません。返済計画も、あとで一緒に考えましょう」

そんな銀行があったら、
「それ、本当に大丈夫か?」と誰でも思うはず。

  • 私たち市民が100万円、200万円を借りるときでさえ、
    • 保証人をつけろ
    • 収入を証明しろ
    • 場合によっては担保を差し出せ
      厳しくチェックされます
  • ところが、市が5800万円もの公金を使うのに、
    元職員からの回収については
    「あとで協議しましょう」で済ませようとしている
    ――

ここに、市民感覚との大きなズレがあるのだ。


6 被害者への賠償には「全く反対していません」

ここだけは、誤解されたくない重要な点です。なぜ私は住民監査請求をしたのか

  • 被害に遭われたご本人・ご遺族が、
    正当な賠償を受けるべきだということに、私は全く異論はない。
  • むしろ、一日も早く不安なく暮らせるよう、十分な補償がなされるべきだと考える。

私が言いたいのは、

「被害者への賠償」と「市民の税金の保全」は両立できるはずだ

ということです。なぜ私は住民監査請求をしたのか

  • きちんとした債権保全(担保、公正証書、返済計画など)を整えたうえで
  • 元職員に対してしっかりと求償し、
  • その回収を前提に、市が被害者への賠償を行う

――こうした手順を踏めば、

「被害者を守ること」と「市の財産(=市民の税金)を守ること」

は両方とも実現できるはず。


7 住民監査請求で何を求めたのか

地方自治法では、住民は

「違法または不当な公金支出などが、かなりの確実さで行われると予測されるとき」

にも、事前に監査を求めることができると定められています(第242条1項)。しかし五島市監査委員は却下してきました(令和7年12月5日付)
今回の和解議案は、議会で可決されれば、すぐに5800万円の支出手続きに進む性格のもの。

そこで私は監査委員に対し、

「元職員への求償債権について、
担保の確保や公正証書の作成など、
確実に回収できる手当てが整うまでは、
解決金5800万円の支出手続きを進めないでほしい」

と求めました。しかし五島市監査委員は却下してきました(令和7年12月5日付)

「一度立ち止まって、本当に市民の財産が守られる形になっているのか、チェックしてほしい」

という、ごく当たり前のお願いだと考えています。しかし五島市監査委員は却下してきました(令和7年12月5日付)→時期尚早だと言っているんでしょうね(^^♪


8 最後に――これは「他人事」ではありません

この5800万円は、どこか遠いところのお金ではなく、私たち一人ひとりの税金です。

  • 普通の市民がローンを組むときには、厳しい審査や担保を求められるのに
  • 市自身が、元職員の故意の犯罪に伴う損害を肩代わりするときには、
    担保もない、回収の見込みもあいまいなまま進めようとしている――

それで本当にいいのかどうか。

「自分のお金だったら、こんな条件で5800万円を出すだろうか?」

と、一度立ち止まって考えていただければと思います。

今後、

  • 議会での審議の様子
  • 市からの説明
  • 監査委員の判断

などについても、可能な限り情報を共有していきます。
あなたは、この問題をどう考えますか?

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