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納税できなかったら?→とことん追い詰めるのが自治体

賠償金を五島市が肩代わり・・・
市元職員が犯してしまったことに対する賠償。五島市は国家賠償法に基づき民事訴訟での和解に応じるという。
国家賠償法は、公務員の不法行為によって損害を受けた場合に、国や公共団体が賠償責任を負うことを定めた法律です。被害者は、民事訴訟を通じて損害賠償を請求することができます。 

国家賠償法第1条(公務員の不法行為)
内容: 公務員が職務を遂行するにあたり、故意または過失によって違法に他人に損害を与えた場合、国または公共団体が賠償責任を負います。
求償権:公務員に故意または重大な過失があった場合、国や公共団体は、賠償金を支払った後にその公務員に対して求償権(立て替え分を請求する権利)を持つことがあります。
被害者への直接責任: 基本的に、被害者は国や公共団体に対して賠償を求めることになり、公務員個人に直接請求するわけではありません。
【五島市元職員損賠巡り住民監査請求】
(解決金5800万円支出方針に)
 五島市の元職員から窃盗被害に遭ったとする高齢女性(故人)の相続人が市と元職員を相手に起こした損害賠償請求訴訟で、市が先月、解決金5800万円を支出する方針を示したことに対し、住民2人が1日、市に住民監査請求した。
 元職員への求償債権の保全措置を講じるまで支出手続きを行わないよう求めている。
請求書によると、住民側は市が12月議会に提出する議案で、元職員の故意による不法行為の解決金を公金から支出するとしたのは「地方自治法に違反し不当」と主張。一審で使用者責任を否定して控訴したにもかかわらず、明確な説明なく方針転換したとして「行政の整合性と誠実性を欠く」と批判した。
元職員に5800万円の求償義務を課しながら、支払い方法などを「後日協議」としたことについても「債権保全措置を怠る違法行為」と指摘。担保確保や公正証書の作成などによる確実な回収を求めている。
訴訟は市の元保健師が2012~13年、担当していた高齢女性の預貯金を不正に取得したとして、2年に相続人が約5千万円の賠償を求めていた。今年3月、神戸地裁尼崎支部が5071万円と遅延損害金の支払いを命じ、市は控訴後の調停で和解に合意した。(内野大司)

監査請求人である私の主張

丸田たかあき
丸田たかあき

そもそも本件は、五島市の元職員が訪問先でキャッシュカード等を用い、預貯金を勝手に引き出したという極めて悪質な犯罪行為である。これは公務員として以前に、一人の人間として決定的に許されないものであり、守るべき最低限の道徳を踏み外した行為であって、宗教・価値観の違いによって言い逃れのできる性質のものではない。

強調すべき核心はただ一つ。
「犯罪を行ったのは元職員本人であり、市ではない」という点である。

市は加害者を雇用していただけに過ぎず、「他人の財産を盗む」という個人の犯罪を組織として予見することは不可能である。仮に予見できたとして、回避可能性があるとは到底思えない。どれほど研修を行おうが、他人の金を盗むという類いの犯罪は組織的な管理で完全に防ぎようがない。複数人対応を義務化するなら人員倍増か給与倍増しかなく、現実的ではない。よって「管理不全」という論点は根本的に成立しない。

例を挙げる。Sくんがセクハラをして同僚が被害を受けた場合、責任を負うべきはSくん本人である。市が「Sくんが社外でセクハラをしないよう注意監督せよ」と言うのであれば、それはもはや幼児を雇っているのと同義であり、労働者への侮辱である。人格・癖に起因する犯罪傾向は研修で矯正できるものではなく、本人が自制する以外にない。この種の犯罪の主体責任は常に個人に帰属すべきであり、市が負うのは道義的責任に限られる。

にもかかわらず、被害額5,800万円を「市が連帯して支払う」という和解内容は筋が通らない。これを不服として上告するというのであれば、私はその姿勢に全面的に賛同するのだ。

本来負担すべきは元職員という犯罪者本人(余罪にて執行猶予付き有罪判決)であり、その倫理欠如と反社会的行為の結果を、市民が税金で肩代わりする構造には強烈な違和感しかない市が被害者救済のために一時的に立て替えることは、百歩譲って理解はできる。しかし、それ以前に必要な条件がある。

「市が立て替える公金を、確実に元職員本人から回収できる仕組みを構築すること」
これが絶対条件である。

・元職員が逃亡したらどうするのか
・破産したらどうするのか

求償不能に陥れば、最終的に5,800万円は市民負担となる。あまりにも理不尽だ。犯罪者に甘く、市民に厳しい。この姿勢が行政として許されるはずがない。「犯罪者には断固とした制裁を科し、逃げ得を一切許さない」という立場を示すことこそ、組織としての責務である。

本件の本質は「市の管理不全」ではなく、「元職員個人の倫理崩壊と犯罪」そのものだ。ゆえに以下を議案の前提条件とすべきだ。

■求めるべき具体的措置
1 求償体制を“逃げ道ゼロ”で構築すること
・現資産の徹底調査
・仮差押え等、確実な保全措置
・逃亡・破産時を想定した代替確保策
・分割弁済の場合、担保・保証人の確保

これらが整わない限り、公金支出を議論すること自体があり得ない。

2 本来の責任主体は元職員本人であることを明確化すること
市が背負う義理は道義的責任までであり、犯罪者の負債を市民へ転嫁することは絶対に許されない。

3 求償不能リスクをゼロにするまで、和解議決はあり得ない
全額回収を前提とし、それを保証する仕組みを作らずに和解案を通すことは、公金保全の観点から断じて容認できない。

■再発防止の核心は「逃げ得を絶対に許さない姿勢」だ
 市職員の犯罪として扱われているが、本質は『一個人の道徳崩壊による窃盗犯罪』である。市が被害補填を行うのであれば、その公金は必ず本人から回収し、逃げ得を不可能にすべきである。これこそが、市と議会が果たすべき責務である。

求償可能性が不明確なまま議案を提出することなど、到底認められない。

そして何より強調すべきは以下である。
『税金で犯罪者の負うべき負債を肩代わりはしない』
この姿勢を明確に発信することが、最大の再発防止策となる。

保証人に親だけでなく親族全員を求めるという案は、法的強制は不可能だが、倫理的合理性は極めて高い。被害者遺族が地獄を見た以上、加害者側に同等の責任感を負わせなければ抑止にはならない。「親族には酷だ」というのであれば、「市民に負担させる方が100倍酷である」という論理は完全に正しい。

親族は血縁だが、市民は全くの無関係だ。
市幹部が「親族が気の毒」と言うのであれば、市民はさらに気の毒である。

行政が甘い姿勢を見せた瞬間、同種の犯罪の芽は必ず残る。
逃げ得を絶対に許さず、徹底的に回収する仕組みを構築する以外に、真の再発防止策はない。

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