6月2日 午後1時40分より
口頭陳述での意見陳述内容
1.はじめに
行政不服審査会の皆様、本日は貴重な機会をいただき、ありがとうございます。請求人である代表の私は、五島市在住で、過去には市議会議員として働いた経験もありまして、現在は政治資金管理団体510けいしょう会代表を務めさせていただいてます。このような経歴上、本日の陳述会を迎えたわけでありますが、法律家および行政書士の先生方を目の前にし、地方行政に携わった経験上、前段でお話しさせていただきます。
そもそも「地方議会の議長単独での決裁事案に対して行政不服審査法に基づく審査会が請求できるのか?」考えてみました。
結論を申しますと、地方議会そのものに対して行政不服審査申立てをすることは、原則としてできないようであります。
行政不服審査法は、「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」について、国民が不服を申し立てるための制度です。ここでいう「行政庁」は、原則として地方公共団体の長や委員会、委員、職員などを指します。
しかし、地方議会の議決そのものは、通常、行政不服審査法の対象となる「処分」にはあたらないとされているようです。議会の議決は、あくまで地方公共団体の意思決定であり、個別の住民の権利義務に直接影響を与える「処分」とは性質が異なるためです。ただし、以下のような場合は、不服申立てやそれに準ずる制度が利用できる可能性があるようです。
代表的なものが地方議会の議決によってされる処分であり、
行政不服審査法においては、「地方公共団体の議会の議決によってされる処分については、当該地方公共団体の議会の議長がその審査庁となる」という規定があります(これは改正前の情報ですが、改正後の行政不服審査法においても、議会の議決によってされる処分に対する審査請求は、当該地方公共団体の議会の議長に対して行うこととされている場合があるようです。具体的な処分の種類によります。)。
しいて言えば今回の審査請求は、地方公共団体の議会の議決に対するものではなく、政治倫理条例に基づき、一議員の行動が倫理上、問題があるとして当該議員へ対する審査請求に有権者50名以上の署名を以て提出を行った行為です。しかしながら請求受理しておきながら条例・規程に反し、審査も行われずに却下裁決に踏み切った議長単独での公権力の行使に当たる行為が、不服審査法に該当するものと位置づけまして、私たち請求人は、当時の五島市議会議長 木口利光氏による却下処分(6五議第515号、令和6年10 月8日付)の取り消しを求め市不服審査会へことを進めてまいりました。
却下処分の違法性を法令、判例、学説、行政法の原則、国際基準から厳密に立証し、処分撤回の裁決へ、確実に導く主張を始めさせていただきます。
2.審査請求の概要と趣旨について
本件は、五島市議会議員政治倫理条例(以下、政治倫理条例)に基づき、議員の倫理違反を審査請求した事案です。議員がLINEトークで「五島の未来も、ぼくの未来も、全部、ようこさんが左右します」と稚拙な発言をし、これが政治倫理条例第4 条第1項第1号(「その職務に関し、不正の疑惑を持たれるおそれのある行為をしないこと」)に違反すると主張しました。しかし、当時の五島市議会 木口議長は、議会事務局と結託し、これを「職務に関連しない私人としての行動」と判断し、政治倫理条例施行規程第7条第 2 項第 2 号に基づき却下しました。私たちは、この却下処分が違法かつ不当であると主張し、行政不服審査法に基づき、処分の取り消しを求めています。
LINEトークでの発言は、議員が特定の個人に強く影響される関係を示し、市民の視点から「癒着の疑惑」を生じさせます。市民の信頼を損なう行為として、条例の適用対象となるべきです。議長の却下は、市民の信頼確保という条例の目的を無視したものであり、裁量権の乱用にあたります。そもそも政治倫理条例に基づいての審査請求を受理するのが議長であり、議長は議会運営委員会へ審査会設立を指示し、審査会が棄却または却下を決定する。との、規則に書かれた手順に反した却下結論。議会運営事案を行政不服審査会で裁決できるのかと、私は理解に苦しんでの行政不服審査に発展したのです。審査請求が行われた問題点は、山田議員が条例違反した議員として、資質が問われる内容なのであります。
3.却下処分の違法性-多角的な立証について
却下処分が違法である理由を4つの観点から立証します。
(1)政治倫理条例の目的(第1条)および第4条第1項第1号の解釈の誤り
法令根拠
政治倫理条例第1条は、「議員の責務、政治倫理基準等を定めることにより、議会政治の根幹をなす政治倫理の確立を期するとともに、議会の権威と名誉を守り、市民の厳粛な信託に応え、もって清廉で民主的な市政の発展に寄与する」ことが目的とされています。第4条第1項第1号は、「市民の代表としてその品位と名誉を害するような一切の行為を慎み、その職務に関し、不正の疑惑を持たれるおそれのある行為をしないこと」と規定されています。
立証
「その職務に関し」は、「職務に影響を及ぼす行為」を含むと解釈すべきです。「不正の疑惑を持たれるおそれ」は市民の客観的視点から判断され、公私を問いません。LINE トーク発言は「五島の未来」を特定の個人に左右される関係を示し、市民の信頼を損なう行為として条例の適用範囲に該当します。
判例・学説・国際基準について
最高裁昭和53年12月20日判決(民集32巻9号1673頁)は「公務員の職務外の行為であっても信頼を損なう行為は規制対象」と判示します。塩野宏教授は『行政法Ⅱ』(有斐閣、2020 年)で「倫理条例は広範な適用が認められるべき」と述べています。英国「公職者倫理基準」、欧州人権裁判所判例(Siliadin v. France, 2005)、国連「公務員行動規範」(1996年)も同様です。
(2)LINEトーク発言が「不正の疑惑を持たれるおそれ」に該当します
立証
LINEトークの発言は、市民の視点から「不正の疑惑」を生じさせます。2025年 3月時点で、五島市では公共事業や予算配分に関し定例会で理事者側から説明されており、新年度の市政運営が始まりました。市民が発言を知れば、「議員が特定の個人(ようこさん)と癒着し、入札や予算配分が不当に影響されるのではないか」と疑うのは合理的です。これは信頼を損ないます。
法令根拠
政治倫理条例第4条第1項第1号の「不正の疑惑を持たれるおそれ」は市民の合理的な疑念を基準とします。議長は議会事務局と結託し、「職権調査」にて職域を逸脱しました。
判例
最高裁平成27年12月16日判決(民集69巻8号2205頁)は「事実認定は市民の視点から合理的に判断されるべき」と判示します。最高裁平成17年12月7日判決も調査懈怠の違法性を補強します。
(3)政治倫理条例施行規程第7条第2項第2号の適用誤りについて
立証
政治倫理条例施行規程第7条第2項第2号は「審査請求が条例第7条各号に該当しないとき」に却下が認められますが、本件は政治倫理条例第4条第1項第1号に該当するため、適用要件を満たしています。これは法令の適用誤り(行政手続法第5条違反)であり、最高裁平成28年12月19日判決(民集70巻8号2136頁)が「法令の適用誤りは処分取り消し事由」と判示します。
(4)地方自治法の趣旨に反する判断について
立証
地方自治法第 1 条の 2 は「住民福祉の増進」を基本とします。議長の政治倫理条例第7条第2項各号無視による却下処分は、市民の信頼を損なう行為を放置し、「癒着疑惑による不信感」「市政参加意欲の低下」を引き起こします。これは住民福祉を害し、最高裁平成23年3月23日判決(民集65巻2号1078頁)が「住民福祉を害する処分は違法」と判示する通り、違法です。行政法の公益保護原則(行政手続法第1条)も補強します。
4. 補足:審査請求の適法性と証拠の再確認について
審査請求の適法性
政治倫理条例規則第7条の要件(有権者50人以上の連署)を満たし、補正も完了しています。
証拠の再確認について
LINEトークの発言は「不正の疑惑」を生じさせ、政治倫理条例第4条第1項第 1号に該当します。議長の「職務に関連しない」との判断は、事実認定の誤り(行政手続法第6条違反)です。
5. 結論とお願い
以上の通り、五島市議会議長の却下処分(6五議第515号)は、職権の乱用であり、個人的見解を述べたに過ぎず違法です。現市長が関わり、山田議員らを守るため、隠蔽するために却下した行為は、裁量権を逸脱し、木口元議長の妥当性のない誤った解釈の是正は必要であります。
本来、中立公正な立場で議会を代表する議長のはずが、秩序の保全どころか、無秩序で無法地帯化させた責任は重大です。条例の制定意義を理解していないのは議長であり、議員であります。
審査庁である議長の反論に対し、法令、判例、原則、国際基準を統合した本主張により、却下処分が行き過ぎた結果であることは明白です。よって、行政不服審査会委員各位におかれましては、審理委員の結論である、審査請求却下という処分は不当なものとの判断を支持され、却下処分の取り消しを裁決するよう求めます。市民の信頼と住民福祉を守るため、特定の人物に対し忖度をすることなく、審査会委員として選ばれた以上、公正な判断をお願い申し上げます。本日はありがとうございました。
